『樽』感想

『樽』(F・W・クロフツ著/田村隆一訳)

『天龍堂文庫』カテゴリィでは、最近紺野が触れた作品についてネタバレなしで、好き勝手感想を書き綴ってまいります。
文庫、と言いつつ、小説に留まらずノンジャンルでやってまいります。
ただ何となく言葉のイメージが良かったので『天龍堂文庫』とカテゴライズしただけで、深い意味はありませんので……。

さて、記念すべき第一回目は、クロフツの『樽』です。

正直、このブログにせよ、紺野天龍の読者にせよ、明らかに興味範囲を逸脱しているような気はしますが、まあ、それはそれ。
最近読み直していたく感激してしまったのだから、感想を書かずにはいられないのです。感想とはすなわち愛なのです。

まずは、あらすじ。

ロンドン港にルーアンから着いた特別に頑丈なワイン樽には女性の死体が詰められているようだった。だが名宛て人はまんまと裏をかいて、その樽を運び去る。懸命な捜査でついに見つかった樽の中にはやはり若い女性の死体が……事件は国際的な広がりを見せ、舞台はパリへ、ブリュッセルへ……同じような樽は英仏の間を場所をかえて何度もやりとりされていた。錯綜した樽の往復のからくりはなにか、そして犯人は? 歴史にのこる傑作ミステリー。

改めて調べてみたら、今から百年近くもまえの作品なのですね。
まあ、とにかく(その筋には)めちゃくちゃ有名な作品なのですが……(今どき知らなくても問題ないよ!)。

実は紺野、中学生のときにこの作品を読んで、何が面白いのかさっぱりわかりませんでした。
だって、延々とおじさんたちが事件の捜査をしていくだけなのですよ……?
しかもその筆致が随分淡々としているものだから、ますます地味に感じてしまうのです。
当時は、クイーンやクリスティといった派手な(?)ミステリィを好んで読んでいたのできっとなおさらそう感じてしまったのでしょう。

そんなこんなで、若い頃はクロフツおじさんに苦手意識を抱いていたのですが……。
最近になって、Kindle版が出ていることを知り、やや躊躇しながら購入して何とはなしに読み始めたのですが……。

これがまあ、面白いのなんのって!

おじさんたちがひたすら事件の捜査をするだけのミステリィを、どうしてここまで面白く感じるのか正直自分でも不思議だったのですが、結局まったく退屈さを抱くことなく読み切ってしまいました。
おじさんたち、すごい。
魅力的な本筋の謎と、二転三転する展開と、魅力的なおじさんたち――これだけでミステリィは十分面白くなるのですね!
確かに今読んでも派手さは感じないのですが……それを補ってあまりあるアリバイ崩しの妙技に、脱帽です。
まぎれもなく、これは歴史に残る傑作ですわ……!

そんな大人になってから初めて楽しめる――まさに酒盗のような作品でした(絶望的に例えが悪い)。

さて、ここからは読む必要のない駄文。
ミステリィやSFのように歴史の長いジャンルでは稀に、古典を読んでいないファンをにわか扱いすることがありますが……。
個人的にはそういった意見に否定的です。
特定の作品を読んでいようが読んでいまいが、その人がそのジャンルを好んでいるのであれば、それで良いのです。全く何も問題がありません。
ただ、コアなファンには、古典を教養と認識している人も少なからずいるわけで……(作品を教養、というのもおかしな話ですが)。
何が正しい、ということではありませんが、もう少しほかのファンに寛容でいられたらなあ、と紺野は密かに思います(これは小説に限った話ではありませんが)。
つまり、何が言いたいのかというと、過去も現在も未来も、ミステリィはずっと素晴らしいですよ、というお話。

ミステリィはいいぞ……!

そんなこんな。
思いのままに書き綴ってまいりました。方向性としてはずっとこんな感じです。
ただ、さすがに今回作品チョイスが渋すぎるという自覚はあるので、次回はもう少し一般向けの作品について書き綴ります。

本日だけ、記事を三つも更新しましたが、次回以降は普通の更新頻度にしていきますのでよしなに。

カレンダ

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